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『マイ・ラウンジ・ミュージック』への思い 2017 秋 ②~誰もいない海

11/23(木)勤労感謝の日・レコ発第2弾前の、ライナーノーツに代わるコラム。今回は2回目です。
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僕の生まれた家は、父が歌謡曲に関わる仕事をしていた関係でいつも音楽にあふれていました。母も音楽好きだったので、クラッシック、シャンソン、演歌、歌謡曲などジャンルを問わず一日中。特に母が越路吹雪さんの大ファンで、小さい頃の僕は二階のベランダで外に向かって季節に関わらず『今ふぁ〜もう秋ぃ〜』と、彼女のヒット曲『誰もいない海』を絶唱する様な子供だったようです。

そんな子にピアノを習わせたらおもしろいことになるのではないか。また母は戦後の物の無い時代に育ち、ピアノやバイオリンを習わせてもらえるお金持ちの家の女の子がとても羨ましかったそうで、自分がピアノを習いたかったという夢を息子に託したのです。僕は男の子ながら4歳からクラッシックピアノのレッスンに通うことになります。

途中反抗期も含め、中学、高校生のころ、僕は一切ピアノを弾かなかったのですが(吹奏楽でトランペットを吹いていました)、大学のビッグバンドのサークルでジャズと出会い、あるきっかけから大学4年からピアノを再開、そして気がつけばプロの道を歩み始めていました。

何の保証もないこの世界、ピアノを習わせておきながら、実際息子がピアノを職業とするととても心配だった様で、母はお友達とふらっとライブを観に来てくれたり、宣伝してくれたりと、事あるごとに応援してくれていました。

そんな母が、一昨年の8月胃ガンになりました。スキルス性胃がんというかなりやっかいなもので、かなり進行した状態でしたが、この時点で大きな転移は見当たらなかったので、胃を切除。その後一旦快復の兆しが見えたものの、昨年1月に再発。命の期限が現実になってきました。

母を元気づけたい。僕の今のpianoを母に聴かせたい。そんな思いもあって、長く続けてきた僕のバンドのレコーディングの実現を決意。早速スタジオ、エンジニアさんミュージシャンのスケジュールも押さえ、8月の録音に向けて準備を始めました。しかし、母の命の期限が予想より早く訪れます。2016年6月19日。母は亡くなってしまいました。感謝の気持ちを作品にして聴かせたいと思って進めていたレコーディングは中止になりました。命の期限に、間に合いませんでした。

つづく



by itasunsun | 2017-09-12 18:57

今日も楽しく!Jazz Pianist板垣光弘の日記です!


by itasunsun